夜間頻尿にお悩みの方

年齢を重ねるにつれトイレに行く回数が増え困っている方、多いのではないでしょうか。朝起きてから夜、寝るまでの間に8回以上トイレに行く場合を昼間頻尿と言い、夜中に1回以上尿意を感じトイレに行く場合を夜間頻尿といいます。

年齢とともに頻尿の割合は増加しますが、60代で夜中にトイレに行く回数が1回、70代で2回であればそんなに心配することはありません。

年齢とともに夜間頻尿が増加する原因として、加齢によるホルモンの変化により尿の量を少なくする抗利尿ホルモンの分泌量が少なくなり夜に作られる尿量が増えることが関係します。

それでは、さらに詳しく夜間頻尿の原因について説明していきましょう。

①夜の尿が増える(夜間多尿)

仕事終わりにふくらはぎ、すねを押してみてください。凹んだまま戻ってこないのは、脚に水分がたまっていることの証拠です。

驚くことに、わずか1㎜凹むだけでも片足では200~300㎖の水分がたまっていると考えられます。

では、このとき足にたまった水分はどこに行くのかというと、夜の睡眠時に血管に吸収され膀胱にたまります。夜の尿が増え、朝方に足のむくみが解消される原因はここにあります。

②夜間によく眠れない(睡眠障害)

ここでは、詳しい説明を避け大まかに説明します。夜眠れない原因としては、睡眠時無呼吸症候群(いびきをかき呼吸が一時的に止まっている)、むずむず脚症候群(脚にむずむずするような不快感)、周期性四肢運動障害(睡眠中に足の指や足首が勝手に動く)があげられます。

この他にも、枕やマットレスが合っておらず寝返りを上手く行えない、着用している寝間着が合っていないことも睡眠を損なう原因になります。

③膀胱にうまく尿をためられない(畜尿障害)

膀胱は筋肉でできており加齢により筋肉が広がらなくなると、膀胱にためられる尿量が減り尿意を感じやすくなります。畜尿障害の原因として過活動膀胱、前立腺肥大症があげられます。

過活動膀胱

正常であれば膀胱がゆるみ尿が膀胱に溜められ、一定の量が溜まることで膀胱が収縮して排尿ができます。

しかし、過活動膀胱では尿が少ししか溜まっていないのに膀胱が収縮を始め、急に我慢できないほどの強い尿意により尿漏れを起こすことがあります。

男女とも40すぎから加齢により排尿に関する筋力は低下し、膀胱が広がらなくなることで膀胱に十分な尿を溜められなくなります。

●原因

①神経の障害により起こる、神経因性

約2割は神経の障害により起こるものです。例をあげるなら脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷などの、原因が明らかなものが神経因性になります。

➁神経障害でないのに起こる、非神経因性

約8割は原因が明らかではないものです。例をあげるなら加齢、前立腺肥大、骨盤底筋群の衰えによるものです。

排尿に関する筋肉には膀胱や骨盤内の筋肉を支える、骨盤底筋や尿道を閉める尿道括約筋があります。

これらの筋肉が衰えることも過活動膀胱の原因になります。男性の過活動膀胱は、前立腺肥大症が原因になることが多いです。

女性には前立腺はありませんが、女性ホルモンの減少により尿道やその周辺の筋力の弾力性が低下します。

その結果、排尿をコントロールする骨盤底筋がゆるみ、膀胱の出口や尿道を「キュッ」と締めることができなくなり尿漏れ、頻尿を起こし過活動膀胱につながるのです。

◇治療

過活動膀胱で使われる薬には、「抗コリン薬」「β3作動薬」があります。

抗コリン薬

<効果>膀胱の過剰な収縮を抑え強い尿意を和らげる
<副作用>眠気、口の渇き、脳の認知機能障害など副作用がある

β3作動薬

<効果>膀胱を弛緩させることで溜められる尿量を増やす
<副作用>副作用は少ないがまれに心臓に影響を与え、心拍数の増加・血圧の上昇あり

夜間頻尿には心臓も関係してきますので、ここで心不全についてもちょっとふれておきます

心不全

心不全とは心臓のポンプ機能が低下し、血流を全身に送ることができなくなる症状をいいます。心臓から血液を送る動脈は太く血液を送りやすく、心臓へ血液を返す静脈は細く血液を送り返しにくい構造になります。

ふくらはぎは、心臓から遠い位置にあり重力の影響を受けます。下半身から血液を押し上げる力が弱くなるので、むくみが生じるのです。

前立腺肥大症

前立腺は膀胱の出口付近にあり、その中を尿道が通過しますので前立腺が肥大(男性40~50歳ごろから)することで尿道が圧迫されます。

○症状

症状としては尿の出が悪い、昼夜を問わずトイレに行きたくなる、尿が漏れるなどがあります。前立腺が肥大し尿道が圧迫されることで、膀胱は強い力で尿を出そうとします。

結果、膀胱の壁が厚くなることで血行障害を引き起こし、筋肉の安定性が崩れることで急に膀胱が収縮する「マイクロモーション」が起こり尿が漏れるのです。

◇治療

薬物療法としては、「α1遮断薬」「PDE-5阻害薬」があります。

α1遮断薬前立腺、膀胱の出口部分の尿道の筋肉をゆるめ尿の通りを良くする。
PDE-5阻害薬前立腺、尿道の筋肉をゆるめる。血行を改善し尿の通り道を広げ尿を出しやすくする。

「PDE-5阻害薬」は心筋梗塞、狭心症でニトログリセリンを使用している方は使用不可ですので注意して下さい。

その他の夜間頻尿の原因

腎臓の機能低下

本来であれば腎臓の機能により、尿を濃縮し膀胱の容量が安定し一定の尿を溜めることができます。

しかし、腎機能が低下することで尿をうまく濃縮することができず、薄い尿がたくさん作られます。薄い尿がたくさん作られることで、膀胱の容量が増え頻尿につながるのです。

🍴食事

塩分の多い食事を控えましょう。

塩分の多い食事をとったとき、体内では体内濃度を一定に保つため塩分を尿として外に出そうとします。ここで問題になってくるのが高血圧の方です。

日本人は、食塩をため込むタイプの高血圧の方が多くみられます。夕方まで尿を出し切れればいいのですが、塩分摂取が過剰な方は夜間にも尿を多く作り塩分を外に出そうとするので夜間頻尿が多いのです。

食事・水分のとり方を見直してみましょう

毎日、楽しみな食事もとり方を見直すことで変化があります。例えば、塩分の多いみそ汁、水分の多い野菜などは朝・昼にとる。カフェインを含む、緑茶、コーヒーは夕方以降とらないなど時間を見直すことも必要です。

仕事終わりの晩酌が楽しみの方も、多いと思われます。しかし夜にお酒を飲むと利尿作用により、実際に飲まれた量以上に尿が作られます。

結果、のどが渇き水分を取ることで二重に尿量が増えますので、お酒は就寝前の4~5時間までに終えましょう。当然寝酒は、禁物です!

それでは、夜間頻尿のセルフケアについて考えていきましょう👇
①弾性ストッキング

弾性ストッキングといいましても、色々な種類があります。おすすめは、膝までの長さのハイソックスです。弾性ストッキングはふくらはぎから足首に向かい少しずつ圧が強くなるように作られています。

圧力が働くおかげで、血液が下から上に流れやすくなり血行の改善につながります。ゆるすぎる場合は、効果が余り見られないので少し履くのがキツイくらいのサイズがおすすめです。

注意したいのが、脚に熱感・炎症反応があり左右のむくみの差が大きい場合です。血管の炎症や浮腫の可能性がありますので着用を見合わせます。

さらに神経障害がある場合も、足先の痛み、圧力を感じにくく着圧の強さによる血行障害が起きていても気づきにくいので注意が必要です。

➁足を高く上げましょう

夜間頻尿にお悩みの方の足上げ

足を高く上げる目的は、ふくらはぎを高く上げることで水分を血管に戻すところにあります。ペットボトルに水を入れ傾けるイメージを持って下さい。

①仰向けになり足の下にクッションを置き、その上に足を乗せます。ペットボトルをイメージすると分かりやすいですが、クッションが高い方が水分は戻りやすいです。

腰・股関節など痛みがある方は、痛みのない角度で行いましょう。摂取した水分が尿になり排出されるまで4~5時間かかりますので就寝前の夕方に行うのがおすすめです。

足を上げる時間が少ないと、水分が血管に戻り切れないので30分くらい行うのが理想です。身体の無理のない範囲から行いましょう。

注意点は夜には行わないことです。

たまに足先を上げ眠られている方がおられますが、就寝中に尿が作られ夜間頻尿を引き起こしますし、寝返りを損なうのでおすすめしません。

③膀胱トレーニング

尿意を感じたとき、できるだけトイレに行くのを我慢して膀胱に溜められる尿量を少しずつ増やしていくトレーニングです。

女性は尿道が短く、膀胱炎にもなりやすいので5分、10分と無理のない範囲から行っていきましょう。

その他にも、骨盤底筋のトレーニングがあります。別のページにて解説していますので、ご興味がございます方はお立ち寄りください。

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