よく膝の痛い患者さんから、○○の軟骨、グルコサミンなどのサプリメントを飲み続けて軟骨は増えますかとの質問を受けます。
結論から申し上げますと、増えないというのが自分の考えです。
なぜかというと、軟骨などの成分を口から摂取しても、そのまま利用されることはないからです。
筋肉や臓器を作るのに必要な、タンパク質を例に説明します。
口から摂取したタンパク質は、口から食道を通り胃で消化され、十二指腸にたどり着きます。
ここで酵素の働きによりアミノ酸(タンパク質の原料で20種類からなる)に分解され、小腸の粘膜から吸収され血液により肝臓へ送られます。
肝臓の酵素によりタンパク質が生産され、再び血液により体の各部へ運ばれるのです。
長々と書きましたが、大事なことは血液によって体の各部へ運ばれるということです。
サプリメントを摂取し分解された有効成分が、ダイレクトに特定の軟骨だけに届くとは考えられません。
さらに、軟骨には栄養を受け取る血管がないのです。このことから、サプリメントで軟骨は再生しないと考えます。
補足
ここで補足です。ひざの軟骨の半月板の外側の縁の3分の1は、内側に比べ厚みがあり血管や神経が分布しています。
しかし、半月板で傷みやすいのは内側の3分の2の薄い場所なのでサプリメントの影響は少ないと思われます。
サプリの効き目?
サプリメントによる副作用も考えなければなりません。
血圧や糖尿病など色々な薬を飲まれている方は、薬の相互作用による副作用にも目を向ける必要があります。
過去にもβカロテン(緑黄色野菜に含まれる成分)のサプリメントを常用したことで、肺がんや胃がんのリスクが上がることが問題になったケースがありました。
一方で、○○の軟骨のサプリメントを飲むと良くなったという方もいらっしゃいます。
これは難しいところなのですが、おそらくプラセボ効果ではないかと考えられます。
例えば「この薬は大変高価なもので疲れも一瞬で吹き飛びます」と最初に情報を与え、実際には人体になんらの効能も果たさないサプリメントを与えるのです。
すると、あたかも本当にサプリの効き目を感じるというケースがあります。これが、プラセボ効果です。思い込みの力ですね。
これがプラスに働けば良いのですが、そうした方法よりかは、季節ごとの栄養のある食べ物を口から摂取するほうが、よほど体のためになるとお思います。
健康を考えサプリメントに自己投資するよりも、ただ純粋に昔ながらの方法のほうが理にかなっている場合が多い、と私は考えています。
もちろんサプリメントの全てを否定するつもりはありません。
しかし、ネットの情報だけには頼らない、自分自身でも自分のからだについて深く考えていく、こういった総合的な考え方も、これからの時代には必要なのかなと思いました。