腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアではないかと心配な方、腰に不安を覚える方は是非とも今後の参考にしてみて下さい。

椎間板ヘルニアでは、椎骨と椎骨の間の緩衝材である椎間板が損傷し、中央の髄核が飛び出し神経を圧迫することで、痛みしびれが見られます。

椎間板ヘルニアになりやすい年齢は、20代から50代です。比較的若い方に多いのが特徴です。男性は女性にくらべ2~3倍ほどの割合で見られ、遺伝的な要素もあります。椎間板は人体の中でも加齢による変化が起こりやすく、驚くことに髄核は20代、繊維輪は30代から変性が始まります。

椎間板の弾力性が失われ、身体にかかる圧力を受け止める力が低下することで繊維輪に亀裂が入り、中の髄核が外に飛び出します。

これが腰椎椎間板ヘルニアです。

➤生活習慣や日常生活を見直しましょう!

中腰や前かがみ時など、姿勢により腰椎はストレスを感じます。職業的には、デスクワークやドライバーなど長時間座りっぱなしの方は腰痛のリスクが高くなります。

デスクワークの方は最低20分に1回は立ち上がって下さい。ドライバーの方はさすがに難しいので、1時間に1回はドライブインで休憩を挟まれるとよいと思います。そうした積み重ねが、腰痛の予防につながります。

日常生活で、たばこを吸われる方も注意が必要です。

たばこに含まれるニコチンは、血管を収縮させ血流を悪くします。喫煙により体内のビタミンCが失われることで、コラーゲンの生成が妨げられ椎間板が変性しやすくなります。これは血管の分布がない椎間板にとっては大問題です。

●腰椎で負担がかかる場所はどこか?

腰椎は第1腰椎から第5腰椎まであり、腰椎椎間板ヘルニアでは第4腰椎と第5腰椎の間と、第5腰椎と仙骨の間の椎間板に負担がかかります。

ヘルニアがどこで見られるかで痛む場所や症状が異なりますが、一般的にはヘルニアが突出した側の坐骨神経痛が見られます。腰からお尻、太ももの裏側からふくらはぎの外側を経由し、足の甲からつま先と痛み、しびれが広がります。

注意すべき点

一般的には左右どちらかに、ヘルニアが突出して痛み、しびれを起こす場合が多いですが、両側にしびれが見られる場合があります。このケースは放置してはいけません。

放置することで神経障害を起こし筋力低下が見られ、転倒の危険性が増します。さらに注意すべき症状は、膀胱や直腸障害を起こし、排尿や排便を上手く行えなくなることです。

ここまで症状が悪化する前に、治療を開始することが大事です!

話は変わりますが、皆さんはお腹が痛くなったとき無意識にお腹に手を当てることはありませんか?ヘルニアでも痛みが強い場合、疼痛性側弯といい、痛みがない側に体を傾けることがあります。

すべてのケースではありませんが、腰椎椎間板ヘルニアの場合は腰を曲げると痛む場合が多く、腰部脊柱管狭窄症では腰を曲げると症状が緩和するケースが多いです。次は、ヘルニアのテストについて見ていきましょう。

❏下肢伸展挙上テスト(SLR)

ポイントは足首を90°に保持し膝を伸ばしたまま床から挙上させ、しびれが出ないか確認することです。ヘルニアがある場合は、脚に電流が走るような神経痛がでます。

この試験の動作にて、足の角度が70°以上に出来ない場合は、SLRテスト陽性の可能性もあります。

このテストは自分の感覚としては、検査を兼ねた治療みたいなものです。痛みが取れていくことで少しずつ脚が上がるようになりますので、脚が上がらない方も安心してください。

❏大腿神経伸展テスト(FNST)

SLRテストは第4~5腰椎、第5~仙骨間のヘルニアを調べる上で有用です。FNSTテストは、それより上の腰椎のヘルニアを診断するのに有用です。

ポイントは腹ばいになり、両ひざを伸ばし片足を90°に曲げ脚を天井方向に持ち上げるように上に持ち上げます。太ももの前面、外側に痛みがでる場合FNSTテスト陽性となります。左右差を確認しましょう。

○椎間板ヘルニアの分類

①膨隆突出型髄核が繊維輪の外側層を破らず、椎間板が膨らんでいる場合
➁後縦靭帯下脱出型後縦靭帯を突き破ることなく神経を圧迫している(ヘルニアの縮小による自然治癒が期待されにくい)
③経後縦靭帯脱出型後縦靭帯を突き破る(ヘルニアの縮小による自然治癒が期待できる)
④遊離脱出型髄核が勢いよく飛び出し、椎間板から分離される

一般的に、強い炎症が見られ痛みが強いものは後縦靭帯を突き破る場合が多く、症状があまり変化せず継続するものは、後縦靭帯を突き破らない場合が多いです。

◇治療

腰椎椎間板ヘルニアは、比較的予後がよく9割がたは手術を行わなくても改善します。急性期(4週間以内)では強い痛みや脚のしびれが見られますが、症状は時間の経過に伴い自然と治まります。

しかし両側にしびれが見られる、膀胱・直腸障害が見られ、3ヶ月以上たっても症状が改善しない場合は手術を検討します。

椎間板ヘルニアで痛みが強い場合、炎症反応が起きていますのでアイシングを行い安静にします。少しずつ痛みが治まってきたらホットパック、赤外線、入浴で患部を温めます。

アイシングの目的は、炎症反応を抑え、炎症を促進する痛みの物質の分泌を抑えることにあります。温める目的は、血流を改善することで老廃物を除去し酸素や栄養が行き渡りやすくなることで、傷ついた組織の回復に効果的が見られます。

温熱療法と並行して、低周波による電気刺激治療を行います。低周波の目的も、筋肉を収縮させ血行を良くするところにあります。ここからはストレッチや軽いウォーキングなど、筋力トレーニングも行い日常生活につなげていきます。

痛みが強い急性期は、コルセットを装着します。たまに睡眠時もコルセットを着用している方もおられますが、睡眠時の寝返りを損ないますので、よほどのことがない限りはコルセットは外しておきましょう。

薬物療法としては、ロキソニン・ボルタレンなどの鎮痛薬、炎症を抑える抗炎症薬を使用します。気休めですが、痛みが気になる方は湿布を貼っても良いと思います。それでも痛みが緩和しない方は、硬膜外ブロックや神経根ブロックを行います。

最近は手術を行わなくて良い、コンドリアーゼという画期的な治療法が出てきています。詳しい説明は省きますが、コンドリアーゼ(椎間板内酵素注入療法)とは、椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注入し髄核を小さくすることで、神経の圧迫を改善する治療法です。

日々医療は進化しています。しかし早めの治療に勝るものはありませんので早期発見・早期治療を心がけましょう!



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