最近の日本人の死因では、がん、心疾患に次ぎ肺炎が増えており、肺炎の中でも誤嚥性肺炎が7割を占めます。誤嚥性肺炎の予防は今後の高齢化社会の重要なテーマとなるでしょう。嚥下(食べ物を飲み込む)トレーニングによって予防に取り組んでいきましょう。
◎誤嚥とは何か
誤嚥とは本来、食道に入るはずの食物が気管に入ってしまうことを言います。例えば食事をしていて、ゴホンとむせた時には誤嚥が起こっています。
なぜ誤嚥するのか?
顔を少し上に上げた時、首の前面に固いでっぱりが出ます。これが、咽頭(のど)です。次にゴクンと息を飲むと、のどが上に上がると思います。のどが上に上がることで、気管の入り口にフタがされ異物が気管に入らないようになります。
つまり誤嚥は、のどがしっかり上に上がらないことで起こるのです。そして異物が気管や肺に入り炎症を起こすことで誤嚥性肺炎を引き起こします。
◎のどが上に上がらなくなる原因
加齢により筋力が落ちるように、のどを上に上げる筋肉の力も低下します。のどは舌骨の上についている筋肉(顎二腹筋、前・後腹、顎舌骨筋、茎突舌骨筋)により引き上げられます。面白いことに、のどの位置も筋力が落ちると下がっていきます。のどを動かす筋肉は、反射機能(飲み込む、せきをする)よりも早く衰えるため注意が必要です。
◇このような症状がでたら注意
食事中に頻繁にせきや、むせが起こる方は、のどが動かないことで飲み込みのタイミングがずれている可能性があります。普段、意識せずに食べ物を飲み込めるのは、嚥下反射により塊になった食べ物をのどの中から食道へ運ぶことができるからです。
のどの感覚が鈍くなる
食事でむせる方の食べ物にはとろみをつけます。これはのどを流れる時間が長くなることで食べ物を感じやすくなるからです。年齢を重ねることで口の中で食べ物を感じ、把握する能力が失われます。試しに、のどの奥に手を入れるとウェっとえずくような反応が起こると思います。これは、咽頭反射といい、この反射が起きない方は注意が必要です。
痰がからんんだり、寝ているときに咳がでる方も注意が必要です。この場合は、飲み込む力が衰えることで少しずつ唾液がのどの中にたまっている可能性があります。しっかり唾液を飲み込めていないことで、寝ている間に少しずつ気管に唾液が流れ込むことで、せきが出ている可能性があります。
上記をふまえ誤嚥を防ぐためには飲み込む力と、吐き出す力が必要だと分かります。
○誤嚥を防ぐトレーニング
飲み込む筋力トレーニング
まずは息をゴクンと飲み、のどを上げ、何秒維持できるか試します。10秒を目標としましょう。鏡でのどを映した状態で行うと分かりやすいです。10秒のどを上げたまま維持した後、口から勢いよく息を吐きだしましょう。のどの筋肉が少し疲れたなと思う回数で行ってみてください。
いまいち感覚がつかめない場合は、以下のことを確認します。まず、のどが上がっている間は、息が止まり呼吸ができません。そしてあごの下の筋肉が固くなり、首筋がピンと張ります。手で触れ、鏡で確認してみましょう。
のどを下げるトレーニング
のどを下げると言われてもイメージしにくいものです。のどに触れ、生あくびでもしてみましょう。のどが下に下がったと思います。鏡で口の中を見ると、舌の奥を押し下げるように動いています。慣れてくると、のどを自在に下げることができます。毎日少しずつ行いましょう。
息を吐くトレーニング
背中が丸く、姿勢が悪くなることで胸郭が広がりにくくなります。それにより肺に十分な空気が入らず、息も吐き出しにくくなります。肺も若いころは風船のようにプクッーと膨らみやすいですが、年齢とともに膨らみにくくなるので普段の姿勢にも注意が必要です。
腹式呼吸
腹式呼吸で吐き出す力をつけましょう。まず、お腹が膨らむのを意識して、鼻から空気を吸います。お腹が膨らんだら、口からお腹を凹ましながら5秒間息を吐き切ります。息を吐き切ると、自然と鼻から空気を吸い込む感覚が起きやすいです。立ったままでも、寝たままでも行えるので毎日の習慣にしてみてください。
トレーニングは10回を目安に行い、慣れてきたら回数とセット数を増やしていきましょう。