肩腱板断裂・石灰性腱炎

肩腱板断裂とは上腕骨と肩甲骨ををつなぐ腱が外傷により、切れてしまう状態を言います。肩腱板断裂を考える上で、まず肩まわりの器官である腱板について見ていきましょう。

腱板の役割は肩関節を安定させることです。肩を取り巻く棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の腱からなり、この4つの働きにより上腕骨頭が肩甲骨の受け皿に保持され、肩を動かすことが出来るのです。

●原因

加齢、肩の酷使による損傷(野球のピッチング、バレーのスパイク、重量のあるものを繰り返し持ち上げるなど)、転倒などの外傷により肩の腱板は断裂します。

この症状は、腱板が肩峰と上腕骨頭にはさまれている解剖学的な関係と、腱板の劣化により40~60代以上の男性に多く見られます。

断裂の種類は、完全断裂・関節面断裂・腱内断裂・滑液包面断裂があり、鑑別が必要になります。

○特徴

肩に力が入りにくく、鈍い痛みが長く続きます。肩を動かしたときに、「ジョリジョリ」と軋轢音がするのが特徴です。大事なことは肩関節周囲炎(五十肩)との違いです。

肩関節周囲炎関節の拘縮・癒着により肩を動かしにくくなる
肩腱板断裂肩は動かせるが、腕の上げ下げの途中のある一定の角度で「ズキン」と痛みが走る

夜間痛、物を持った後に痛むなど肩関節周囲炎との類似点も多いので、最初の診断が大事になります。

◇治療

肩腱板断裂は放置しておくと悪化します。まずは患部の固定を行い安静にして、痛みを見ながら軽めの運動療法を行います。

断裂している部分は手術をしないと治りませんが、腱板すべてが断裂することは少ないので、残存している腱板の機能を運動療法で上げていくことが必要になります。

痛みがとれない場合は、水溶性副腎皮質ホルモン、ヒアルロン酸などを肩峰下滑液包内に注射します。

それでも、痛みが治まらない場合は手術を検討します。

40歳~60歳に多く見られますが、子供で見られるケースもあります。体がまだできていない子供の時に、スポーツに打ち込み、腱板を損傷することもあります。あまり無理をかけないように、親御さんは見てあげてください。

石灰性腱炎

肩の腱板断裂と似たような症状を呈するものに石灰性腱炎があります。症状は激しい肩の痛みで、睡眠が妨げられ関節を動かすことが困難になります。

腱板部分に石灰が沈着することで、腱板の断裂が見られることもあります。

◇治療

急性期では腱板に針を刺し、沈着したミルク状の石灰を吸引します。その後は、安静にし温熱療法・運動療法を行います。

石灰沈着により腱板が固く膨らみ、肩を動かしたときに周囲に接触し炎症が消失しない場合は、手術を行います。

タイトルとURLをコピーしました