変形性股関節症

変形性股関節症とは、長年の負荷の蓄積により軟骨がすり減り骨の変形が進むことで、それを支えている靱帯、関節包、腱に負担がかかり関節の動きが制限され、痛みを引き起こすことをいいます。

👇このような症状はございませんか?

  1. 階段の上り下りが痛みで困難である
  2. 赤ん坊のころ脱臼・亜脱臼を経験している
  3. 安静にしていても痛む(夜に痛みが強くなる)
  4. 長い時間歩くと痛くなり、だるさを伴う
  5. 股関節を動かすと「ゴリゴリ」と音がしたり、こわばりがある

○変形性股関節症になりやすい方

①老化加齢により骨密度が減少し、軟骨の柔軟性が失われ傷つきやすくなる
②肥満体重が増えることで、重さを受け止める場所(荷重点)がずれる
③激しいスポーツ走ったり、止まったりを繰り返す競技、トレーニングにより負荷がかかる
④仕事立ち時間が長い、重いものを運ぶなど繰り返すストレスにより負担を感じる

変形性股関節症は、女性に多くみられます。女性に多い理由としては、構造的特徴と遺伝的特徴があります。

女性は男性の骨盤に比べ横に広く縦に短い構造のため、仙骨と恥骨を結んだ重心線から股関節までの距離が遠いので股関節にかかる負担が大きくなります。それに加え、臼蓋が小さく被りが浅い、寛骨臼形成不全が多いことも女性に多い理由になります。

骨盤男女比較

❏寛骨臼形成不全について

臼蓋形成不全の程度を調べる手段としては、CE角とシャープ角があります。CE角とは、大腿骨頭の中心を通る垂線と、大腿骨頭の中心から臼蓋外上縁を結んだ線がなす角度のことで正常な方で25度以上とされています。

つまりこの角度が小さいと被りが浅く、角度が大きいと被りが深いということです。

シャープ角とは、左右の涙痕を結んだ平行線と、涙痕と臼蓋外上縁を結んだ線がなす角度でのことで成人では42度以下が正常とされています。

シャープ角は、臼蓋の傾斜角ですので、45度を超えると被りが浅い状態になります。

つまり、CE角が小さくシャープ角が大きい場合、臼蓋の被りが浅く、寛骨臼形成不全に注意しなければならないということです。

これらは専門的でやや難解ではありますが、画像診断の説明に使われることもあるかもしれません。知っておいて損はないと思います。よりイメージをふくらませるために股関節の構造もみていきましょう。

□股関節の構造

股関節は、大腿骨頭「ボール」と寛骨臼「ソケット」からなります。大腿骨頭の3分の2ほどを寛骨臼が覆っていることで安定性が保たれます。

関節の被りが浅い方は、負荷を受け止める大腿骨頭の接触面が少ないので、体重を支える負担が大きく軟骨がすり減り、脱臼しやすい構造になっています。

同様に、被りが深い方は、寛骨臼と大腿骨頭がぶつかり、骨頭を包み込むよう寛骨臼の縁につく関節唇を傷つけてしまいます。

👇さらに詳しく股関節をクローズアップして見ていきましょう!

股関節軟骨

寛骨臼、大腿骨頭には2~5mmほどの関節軟骨があり、高い弾力性に水分を含んだ潤滑性を備えます。寛骨臼の軟骨の縁には、大腿骨頭を包み込む関節唇があり、関節内の軟骨を包み込むように関節包があります。

関節包の外側は線維膜、内側は滑膜と二重構造になっており、この中を関節腔といいます。滑膜では滑液という、皆さんおなじみのヒアルロン酸やたんぱく質などを含む粘り気のある成分が、関節腔を満たしています。

滑液の働きにより、関節軟骨に栄養を送り、関節の衝撃を受け止め、滑りをよくして軟骨が減ることを防止し関節を保護しているのです。

変形性股関節症は、進行性のため早期の予防が必要です。

□変形性股関節症の進行度

前期

<関節と軟骨> 
関節の変形、軟骨のすり減りはない
<痛み> 
痛みはほとんど見られない

初期

<関節と軟骨> 
軟骨がすり減り、すり減った軟骨下にある骨が固く表出し(骨硬化)、股関節の隙間が狭くなる(狭小化)
<痛み> 
痛みがあり、歩行に影響あり

進行期

<関節と軟骨> 
軟骨がさらにすり減り、骨硬化、狭小化が進行し、骨棘、骨の一部が吸収され空洞ができる骨嚢胞が見られる
<痛み> 
関節の制限が見られ、痛みが増す

末期

<関節と軟骨> 
軟骨、股関節の隙間がほぼ消失し、さらに骨棘、骨嚢胞が増える
<痛み>
 安静にしていても痛み、脚長差が見られる

変形性股関節症の検査には、パトリックテスト、スカルパ三角圧痛テストがありますので、気になる方は検査してみて下さい。

◇変形性股関節症の治療

①運動療法

股関節を支える筋力をつけ、股関節を安定させ、可動域を高めることで血行が良くなり、軟骨に栄養が行き渡ることで痛みを緩和させます。

軽めのウォーキングを行い、痛みがある方は水中ウォーキングなど無理のない程度に行います。
股関節の外転を行う、中殿筋や屈曲を行う腸腰筋のトレーニングを早期から行うことも効果的です。

➁薬物療法

鎮痛薬、座薬、湿布で様子を見ます。しかしながら、薬物療法は炎症反応や痛みを和らげるもので、関節の変形や軟骨の修復には効果が見られませんので、注意して下さい。

なお、サメの軟骨や、グルコサミンなどのサプリメントをとったほうがいいですか?との質問を頂くことも多いですが、個人的には軟骨は体の至る所にあり、体内に吸収されるときにアミノ酸や糖に分解され、効果のほどは定かではないと思っています。

飲まれていて効果がない方は必要ないと思いますが、効果がある方は継続されてよいと思います。

③補助具療法

歩行時に股関節にかかる負担を軽減し、転倒の防ぐため、杖を使うことを検討します。

杖で自立歩行が困難な場合は、歩行器、シルバーカー(手押し車)を使用し安定性を高めます。

杖は、適切な使い方が出来ていないと、歩行が上手くできないので、杖をご使用されていて気になる方はご相談下さい。

④温熱療法

温熱療法では患部を温めることで、血行促進、発痛物質や老廃物を促す効果が期待されます。当院では、ホットパックや赤外線を使用します。自宅では、リラックス効果のある入浴を行いましょう。

⑤手術

上記の方法でも改善が見られない場合は、手術を検討します。手術では、骨切り術や大腿骨頭置換術があります。

手術をして終わりではなく、術前に筋力強化を行うことで術後の経過も良くなることから継続してリハビリを行うことが大事になります。

股関節を長く使用することを考え、早期発見・早期治療を心がけましょう。

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