けがをしたわけでもないのに突然肩が「ズキズキ」痛くなる方は、肩関節周囲炎かもしれません。肩関節周囲炎を経験された方の中では、時間の経過とともに良くなったという方もおられます。
しかし痛みが軽くなっただけで、実際は関節の可動域が制限されている方が多いのです。
●原因
肩関節周囲炎の原因として考えられるのは、加齢や腱の柔軟性の低下です。また、肩周辺の筋肉の構造も考えていきましょう。
個人的見解として、背中が丸くなり巻き肩の方にこの症状が多い印象があります。日常生活において肩の内部では、摩擦や衝突を繰り返します。
その結果、肩峰下滑液包、腱板に炎症が起き組織が癒着を起こし、部分的に組織の断裂が生じることもあります。
肩峰下滑液包の役割は、関節の動きを滑らかにする滑液を作り衝撃を吸収することです。
○症状
肩の痛みにより夜中に目が覚める、夜間痛が一つの特徴になります。また、じっとしていても肩が重だるい感じがして痛みを伴うのも特徴のひとつです。
見た目として、左右の肩の高さが違う方もいらっしゃいます。このような症状に進むと、衣服の着脱、洗髪も困難になります。
それでは、この症状に対しどのような処置経過をたどるのか見ていきましょう。
➀急性期 | 痛みが強く安静にします。無理のない範囲で運動療法を行う時期です |
➁慢性期 | 痛みは軽減しますが可動域の制限があります。少し痛いくらいで経過を見ながら運動療法を行います。 |
③回復期 | 痛みも軽減し、動かすことのできる関節の範囲も広がります。 |
人により違いはありますが、肩関節周囲炎を放置しておくと無意識に痛みをかばう姿勢になります。結果、肩を動かさなくなることで次第に肩の可動域が狭くなり関節が癒着が起こり、関節包が拘縮し固くなるのです。
◇治療
➀温熱療法(遠赤外線・ホットマグナ) | 患部を温めることで、筋肉の緊張を緩和し血行を促進させます。 |
➁運動療法 | 無理のない範囲で毎日少しずつ行います。運動療法はおって説明いたします。 |
③ステロイド薬の注射 | 激しい痛みがある場合は、関節包、肩峰下滑液包にステロイド薬を注射し炎症を抑えます。 |
あまり肩関節周囲炎では行うことがないかもしれませんが、痛みがひどく、日常生活に長期にわたり支障をきたす場合は手術を検討します。このようなケースでは、関節包が癒着し関節の間が狭くなっていたり、腱板の断裂が見られます。癒着部を切除し、腱板を縫い合わせる手術を行います。
それでは運動療法を説明していきます。
振り子体操
➀痛くない方の手を台に置き、上半身を支え腰を少し前傾させます。
➁痛みがある腕の力を抜き、ぶら下げ、力を入れず40~50cmくらいの円を内回りに描くように動かします。20回位から始めましょう。
激しい痛みがおさまってきてからは、同じ動きをダンベルを持って行います。重ければいいというわけではないので、1~2kgくらいの重さから始めてみましょう。
➀のポジションから力を抜き、前後に振り子のように動かしてみましょう。ダンベルの重みを感じ動かすことがポイントです。腕の力は要りません。
巻き肩予防
➀手の平を真上に向け、肘を90°に曲げ、小さい「前ならえ」の姿勢をとります。
➁脇を締め肘が体からなるべく離れないよう、両前腕を内から外へ開きます。背中に物を挟むイメージです。
ポイントは肩に必要以上に力が入らないようにすることです。リラックスして行います。まずは、時間のある時に20回行いましょう。
テーブルふき体操
➀椅子に腰かけ、痛む方の手のわきの下に手を入れます。そして、痛む方の手をテーブルの上に置きます。脇の下の筋肉が動かないくらいの力で行います。
➁痛みがある腕の肘を支点として、肘から先を車のワイパーのようにリズムよく動かしテーブルを拭く動作を行います。肘を外側に開く角度は30°くらいです。この動作を20回から始めてみて下さい。
自分の経験上、肩関節周囲炎はしばらく同じ状態が続き「すとん」と良くなる時期があります。
イメージとしては階段のように一段上がってまた一段という感じです。毎日少しづつでもいいので体操に取り組んでみて下さい。長く思える道も小さな一歩からです。